被曝・診療 月報 第36号 健康を守る、福島をくり返さない  東海第二原発の再稼働はNO!

この号の内容
1 健康を守る、福島をくり返さない
2 第36回県民健康調査委員会傍聴記
3 現代(いま)いのちを問う
講演会・分科会の報告

4 弁護士田辺保雄氏
「原発賠償訴訟の現状について」

5「9年が過ぎて父親として」

 

健康を守る、福島をくり返さない

 東海第二原発の再稼働はNO!

本町クリニック院長 杉井吉彦

10月の19号台風によって東日本の各地に大きな被害が発生しました。福島では死者30名を超え、住居の全・半壊1、700棟、床上浸水12、000棟の大被害を受けました。10月23日の「福島民報」の投書欄には「農機はもとより田畑は水没。国は一機100億円心する戦闘機の輸入をキャンセルし、災害復旧に回してください」との投稿がありました。同じ面の「今回の天皇代替わりの費用160億円」対比に福島県民の気持ちと意志が現れていると思います。被曝を強要する、チェルノブイリ法の基準と大きく異なる20mシーベルト以下の帰還を誘導する「復興」は進んでいません。多くの住民が「避難解除」になった地区への帰還に応じていません。被曝・健康被害の恐れと「復興」に値するための生活基盤の整備が、復興が進んでいないことを国民は知っているからです。「復興オリンピック」は実態のない、むしろ被曝・健康被害を進めるものとしてあります。
http://file.doromito.blog.shinobi.jp/Img/1569216833/ さらに、来年3月から、常磐線の全面開通(現在、運休中の浪江駅~富岡駅)が進められようとしています。これまでの基準では「帰還困難地区」である、住民が生活していない地区に列車を走らせる計画です。20mシーベルト以上にかかわらず、JR東日本株式会社の、女子労働者を含む、従業員に「線路上は除染されている」とが、「列車が走っても、汚染に関する特別な検査は必要ない」と、被曝をまさに強制する事態になろうとしています。また、乗客として「通過」する県民に対する、「特別な処置・警告などはしない」としています。今までの基準を全く無視し、最終的には、「帰還困難地区」は無くす、20ミリシーベルト以上の地域に住まわせる方針に切り替える第一歩ではないかと危惧されます。「安全・安心」のキャンペーンに対して、今こそ、「被曝強要反対」「健康を守れ」が、医学・医療の常識ではないかと思われます。東京保険医協会の「東京保険医新聞・鋭匙」に、[医師の被曝基準を超えるような地域に‥これでいいのか]との意見は人々の、とりわけ人々の健康を守る責務がある医師の共通の意思・見解とならなくてはいけないと考えます。
また茨城県では、最も古い時期に完成した、東海第二原発が、2、000億もの巨費を使って再稼動する計画が進んでいます。多くの県民が(関東一円でもあります)反対しており、元日本医師会長の「福島の甲状腺がんの多発の考えると・・」の反対集会発言かあり、多くの医師が参加しています。賛成・反対を問う「県民投票」運動が進んでいます。福島の現実を確認すればするほど、茨城東海第二原発再稼動反対の意思を強くせざるを得ません。

原発事故の避難区域
(2017年4月1日現在)

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被曝・診療 月報 第35号  福島原発事故の終息宣言となる東京オリンピツクに反対する

この号の内容
1 福島原発事故の終息宣言となる東京オリンピックに反対する
2 ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・チェルノブイリ・フクシマをくり返すな
3 福島県浪江町・飯館村における放射線調査の報告
4 福島の現状と課題:土山元美医師の講演を聞いて

 

福島原発事故の終息宣言となる
東京オリンピツクに反対する

一放射能被害から福島県民の命を守るためにー

ふくしま共同診療所院長 布施幸彦

国連人権理事会の勧告はlmSV以下が基準

 昨年10月、国連人権理事会のトゥンジャク氏が日本政府に「福島への子どもの帰還見合わせを求める」勧告を行いました。
福島原発事故のあと、日本政府が避難指示を解除する基準の1つを年間の被ばく量20mSV以下にしていることについて「人権理事会が勧告した1mSV以下という基準を考慮していない」「日本政府の避難解除の基準ではリスクがある」「子どもたちや出産年齢の女性の帰還を見合わせるよう」求めたというものです。
これに対して、日本政府は、国際的な専門家団体の勧告に基づいていると反論し、その上で「帰還を見合わせるべき」という指摘については、「子どもたちに限らず、避難指示が解除されても帰還が強制されることはなく、特別報告者の指摘は誤解に基づいている」と反論し、国連人権理事会と日本政府との立場の違いが浮き彫りになりました。

住宅手当を打ち切るなどの「帰還を強制」する政策

政府は「帰還を強制していない」と言っていますが、年間20mSV以下の地域の避難指示を解除し、学校を再開し、住宅手当の補償を打ち切り、県外への自主避難者をそれまで住んでいた住居から追い出し、2020年3月には帰還困難区域住民の住宅補助さへ打ち切ります。この政策は「帰還の強制」そのものです。そして2020年3月に常磐線を全面開通させ、「福島原発事故はなかった」ことにし、東京オリンピックを福島で開催しようとしています。

困窮している被災地へ3兆円を回すべき

東京オリンピックは、安倍首相が「健康被害は今も将来にわたってもない」「事故はアンダーコントロール」と言って招致しました。費用は8000億円と当初は言われていましたが、今は3兆円を超えると見積もられています。こんな多額なお金をオリンピックに費やす必要があるのでしょうか。
ギリシャは、アテネ・オリンピックを行った後に破産しました。長野オリンピックで、長野県は1兆4439億円の借金を背負いました。日本も東京オリンピック後は多額の借金を背負うことになります。
それでも3兆円ものお金を使うというなら、東日本大震災・熊本地震・北海道地震・西日本豪雨災害などで被災した人々の支援や原発事故で被ばくした人々に使うべきです。

被曝隠しの国を誇れるのか

東京オリンピックまで後1年を切りました。東京都は、小・中・高校でオリンピック・パラリンピック教育を35時間/年行っています。
その内容は、①ボランティアマインド、②障害者理解、③スポーツ志向、④日本人としての誇り、⑤豊かな国際感覚、を育むという内容です。
東京都はオリンピック・ボランティアを募集しました。「ボランティア」良い言葉ですが、別の言い方をすれば、ナチスドイツの[労働奉仕]、戦前の日本の「国民勤労報国協力。です。
東京オリンピックの効果について、NHKのスポーツ担当解説委員は「第一に国威発揚」と言っていました。ナチスドイツのベルリン・オリンピックと同じです。震災復興を印象付ける取り組みとして、福島から聖火リレーを開始し、野球・ソフトボール競技を開催することになっています。

IPPNWドイツ支部が「放射能」五輪開催の被曝を懸念

IPPNW(核戦争防止国際医師会議ドイツ支部)がTokyo 2020 Die radioaktiven Olympischen Spiele(2020年東京「放射能」オリンピック)という声明を出しています。
内容は以下の通りです(要約)。
参加するアスリートと競技を見物する観客たちがフクシマ近郊で被ばくするのではないかと懸念している。特に放射線感受性の高い妊婦や子供たちが心配です。日本政府は、この五輪開催には最終的に120億ユーロかかると予測している。しかし日本政府は、避難指示解除後、故郷に帰還しようとしない避難者たちには支援金の支払いを止めている。IPPNWは、放射能に汚染された地域にあたかも「日常生活」が戻ったような印象を世界に与えようとする日本政府に対しはっきり「ノー」を突きつけます。

「原子力緊急事態宣言」を解除する努力が急務

また、元京都大学原子炉実験所助教の小出裕章氏は「フクシマ事故と東京オリンピック」という声明でこう書いています(要約)。
日本はいま「原子力緊急事態宣言」下にある(平常時は一般人の被ばく量は年間1mSV以下、しかし 原発事故で緊急事態となったので、年間20mSV以下まで許容)。環境を汚染している放射性物質の主犯人はセシウム137であり、半減期は30年。 100年たっても10分の1。この日本という国は、これから100年たっても、「原子力緊急事態宣言」下にある。
五輪はいつの時代も国威発揚に利用され・・・。
箱モノを作ってば壊す膨大な浪費社会と、それにより莫大な利益を受ける土建屋を中心とした企業群の食い物にされてきた。大切なのは「原子力緊急事態宣言」を早く解除できるよう、国の総力を挙げて働くこと・・・。事故の下で苦しみ続けている人たちの救済こそ、最優先の課題・・・、少なくとも罪のない子どちたちを被げくから守らなければならない。それにも拘わらず、この国ぷ五輪が大切だという。フクシマを忘れさせるため、マスコミは今後ますます五輪熱を流し、五輪に反対する輩は非国民だと言われる時が来るだろう。先の戦争の時もそうであった。罪のない人を棄民したまま五輪が大切だという国なら、私は喜んで非国民になろう。原発を再稼働させ、海外にも輸出する。原子力緊急事態宣言下の国で開かれる東京五輪。それに参加する国や人々は、もちろん一方では被ばくの危険を負うが、一方では、この国の犯罪に加担する役割を果たすことになる。

政治に翻弄される五輪、もう止めよう

全世界のアスリートが集まり技を競うオリッピックは素晴らしい大会だとは思います。しかしオリンピックの歴史は、政治史にまみれています。
1936年のナチスドイツのベルリン、1976年のモントリオールでは22ヶ国のアフリカ諸国がボイコット、1980年のモスクワではアメリカ・西ドイツ・日本などがボイコット、1984年のロサンゼルスでは東ヨーロッパ諸国がボイコットを行っています。
日本は原発事故によって汚染されました。その地でオリンピックを行うのは間違っています。オリンピックを行うことより先にやるべきことがあります。IPPNWや小出氏の提言のように、私はオリンピックを返上すべきだと思っています。それで非国民と言われるなら私も喜んで非国民になりましょう。

被曝・診療 月報 第34号  甲状腺超音波検査を今こそ充実させよう

この号の内容

① 甲状腺超音波検査を今こそ充実させよう
② ふくしま共同診療所と共に歩む会結成のつどい開かれる
③ Letter fromヒロシマ
④ 第35回県民健康調査検討委員会レポート
⑤ 7月7日「医療シンポジユウム」に参加して

 

甲状腺超音波検査を今こそ充実させよう

 本町クリニック院長 

検討委員会で『中間まとめ』公表延期

7月8日「第35回福島県民健康調査検討委員会」が開かれました。詳細は本号の他の記事でも報告されていますが、あまりにもひどすぎる会議の内容・結論の公表として歴史に残ると思います。
「甲状腺検査評価部会」の「甲状腺本格検査(検査2巡目)結果に対する部会まとめ」を基に結論的に「本格検査[2巡目で発見された甲状腺がんと放射線被曝の間の関連は認められない]・・・2巡目だけの検査での結論で「認められない」と所定してしまっている。「本格検査における甲状腺がん発見率は、先行検査よりもやや低いものの、依然として数十倍高かった」としながら、批判の強い放射線に関する国連科学委員会(UNSCERA)の「推計甲状腺吸収線量」を用いて「線量と甲状腺がん発見率に明らかな関連は見られなかった」と断定(推定!)している。「男女比がほぼ1対1となってり、臨床的に発見される傾向(1対6程度)と異なる」としながら、「評価は今後の課題として残されている」と全く、医学的・統計学的に考えられない結論を導き出しています。
会議は、様々な傾向の、異論・反論で分裂状態となり、全会一致とはならなかったのも事実です。しかしながら、全体的には「甲状腺検査不要・縮小」の方向に向かって一段と進んでいったことは間違いありません。

早期発見・早期治療ーがん治療の常識通ぜず

それからよく示したものとして県の「甲状腺検査のお知らせ文改定案」の公表です。検査を受けようとする県民に配布される統一した文書で、ここには{縮小・廃止}したい意図がはっきりと見えます。それによると、そもそも検査は「県民の不安に応えるために始まりました」(癌の早期発見のためではないのだ)とし、「検査にはメリットとデメリットの両面があります」論が主要な主張となっている。「デメリットとしては、一生気づかずに過ごすかもしれない無害の甲状腺がんを診断・治療する可能性」(あくまで可能性であって、「無害」かどうかを発見された癌で、確定することが不可能であるという、甲状腺がん治療上の医療常識を知らせようとしていない)。
さらに、「治療に伴う合併症が発生する可能性」がデメリットと主張しています。驚くべきことに癌治療において「合併症が発生する」ことが、癌検査・治療を受ける人々の医療上の利益にならないと考えているのが、多数派だと考えているのだろうか。そうでなければ、「発生する可能性」で検査をやめろと脅迫していると指摘されても、反論できないと思われます。そして「結節やのう包が発見されることにより不安になるなどの心への影響」がデメリットとしていることは、全く理解できません。「核惨事」によって心身ともに傷害を受け・受け続ける状況にある子供たちにとって、発見して治療して健康を守り抜こうとしている県民にとって、「発見されることによって不安」などと、人々の苦痛と不安に「検査しないように」と呼びかける立場は、医師にとって、あってはならないことと考えます。
いずれにせよ、現実的には、甲状腺検査は減少を続けており、とりわけ18歳以上(25才まで)の受診者は10%で、発見が遅れるケースが増加することが考えられ、福島を離れている県民に対する検診は長期にわたって全国的な規模で行う必要があるのは多言を要しません。福島県で「指定」した他府県の甲状腺検査機関は、2~3ヶ所が多く、充分ではありません。さらに成人の甲状腺検査の必要性も県内外において絶対に必要だと思っています。
現実に、検査を希望する成人が増加しています。これらの要求に絶対に応えねばなりません。
こと甲状腺だけでも「縮小・廃止」ではなく、長期で膨大な数の検査をやり遂げればならないと思います。事態はきわめて深刻で、全力で「避難・保養・医療の原則」を貫かねばなりません。

3.10被曝・医療・福島シンポジウム報告集 事故より8年、福島の現実と課題 『被曝・診療 月報』特別号(第33号)

【発行所】 ふくしま共同診療所
〒960-8068 福島県福島市太田町20―7 佐周ビル1 階
(TEL)024-573-9335  (FAX)024-573-9380
(メール)fukukyocli@ark.ocn.ne.jp
【編 集】 本町クリニック事務局
〒185-0012 東京都国分寺市本町2-7-10 エッセンビル2 階
(TEL)042-324-9481  (FAX)042-400-0038
(メール)suzuki@honkuri.com
【頒 価】 650円
(銀行口座) みずほ銀行 国分寺支店
普通 4282013
名義 『被曝・医療月報』

目次

◆福島の現実と格闘し、被曝医療を続ける—- 1
-シンポジウム実行委員長の挨拶-
ふくしま共同診療所院長 布施幸彦
◆ICRP(国際放射線防護委員会)体系を科学の目で批判する—- 4
社会的・経済的戒律から科学と人権に基づく「放射線防護」体系へ
琉球大学理学部名誉教授 矢ヶ崎克馬
◆被災当事者にとつての東電原発事故—- 14
~健康被害と損害賠償問題を中心に~
医療法人創究会 小高赤坂病院理事長/院長 渡辺瑞也
◆文在寅(ムン・ジェイン)政権下での原発政策について—-32
東国大学医学部教授 キム・イクチュン
(通訳 韓目国際間通訳 カン・ヘジョン)
◆ビデオレター 3.10国際シンポジウムに寄せて—-37
IPPNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部 アレックス・ローゼン
◆質疑応答
◆コーデネーターとしてシンポジウムを振り返る—-52
医療法人社団緑杉会 本町クリニック院長 杉井吉彦
◆寄稿 フクシマの苦悩の「打開策」—-53
-被爆地ナガサキの二の舞を演じないために一
やまぐちクリニック(大阪・高槻)院長/現代医療を考える会代表
山口研一郎

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被曝・診療 月報 第32号  被ばく8年目の現実と向き合う

この号の内容
1 被ばく8年目の現実と向き合う第3回シンポジウムヘ
2 脱原発は福島から~分断を乗り越えるために
3 ふくしま共同診療所と共に命を守る:佐藤幸子さん
4 第33回県民健康調査検討委員会 傍聴記
5 高野徹委員を尖兵とする甲状腺評価部会などの惨状

被ばく8年目の現実と向き合う

一第3回被曝・医療福島シンポジウムヘご参加の呼び掛けー
ふくしま共同診療所院長
布施幸彦

今年の3月11田こ福島第一原発事故から9年目になります。原発事故で被ばくした福島県民に寄り添う医療をするために2012年12月1日に開院した当診療所も6年3か月となります。診療所の経営状況は今も余り良くありませんが、診療所を支えようとして下さる全国・全世界の人々のお陰で、今まで診療を続けて来られました。最初に感謝申し上げます。

診療所の6年間の活動

診療所は、「避難、保養、医療」の原則を掲げ、開設以来様々な活動を行って来ました。理由は、被ばくした人々の健康を守り、東京電力と国に全責任を取らせ、全国・全世界から原発をなくすためです。
①子供だけでなく大人も含め約3、000人の甲状腺エコー検査と健康相談。
②原発事故のために避難を余儀なくされ仮設住宅で暮らす住民を対象にした健康相談と個別訪問診療。
③除染労働者や原発労働者等の被曝労働を行っている人の検診と治療。 ④全国の保養施設の紹介と連携。
⑤福島の現状を全国・全世界に伝える講演活動、ほぼ月に1回講演を行い、2017年には韓国の国会議員会館で講演しました。
⑥全世界の反核・反原発組織との連携。
⑦県内外の避難者への支援。第2回被曝・医療福島シンポジウム
⑧「被曝と帰還の強制に反対する」署名活動、今までに62、811筆を集め、県当局と6回の交渉を重ねてきました。
⑨県内・県外での無料甲状腺エコー検査。
診療所は、活動の集大成として「被曝・医療 福島シンポジウム」を2015年から2年に1回行っています。今年第3回目を行います。

第1回シンポジウム

第1回目は2015年3月8日に行いました。講演者は4人。私か最初に「放射能による小児甲状腺がんの多発と原発再稼働」と題して発言し、次に「子どもたちを放射能から守る全国小児科医ネットワーク」代表の山田真氏が、医学データーは立場の違いでいろいろ解釈される余地があるので、被ばくした県民の立場に立つことが肝心という観点で発言。3番目に韓国で中間貯蔵施設建設反対運動を担われた反核医師の会・東国大医学部教授のキム・イクチュン氏が放射線被ばくに闇値は無く「福島は住むべき場所ではない」と直言し、最後に元国会事故調査委員で3.11甲状腺がん子供基金代表理事の崎山比早子氏が、放射線による非がん性疾患、特に免疫系への影響について述べられました。

第2回シンポジウム

2017年3月12日に第2回が行われ、この時の講演者も4人。最初に広島大学原爆放射線医学研究所の天龍滋氏が「放射性微粒子曝露原因説で解ける原爆被爆者における健康リスクのパラドックスーフクシマの皆さまへの提言-」と題して、放射性微粒子による内部被曝について発言されました。次に東国大医学部キム・イクチュン教授が最初に「大統領を罷免した国・韓国から来ました」と挨拶し、「韓国の原発周辺における疫学調査]と題して、原発周辺で甲状腺がんが多発しており裁判所がその原因は原発にあると認定したことを報告し、疫学調査の重要性を強調しました。3番目に山田真氏が、「今私たちがしなければならないこと」と題して、[この6年間福島では闘いらしい闘いはなかった]「この状況を打開するにはどうすれば良いのかを皆で考えていこう_と話されました。最後に私か「被ばくの強制とたたかいの最前線から」と題して、2020年東京オリンピックと甲状腺検査縮小・高汚染地区への帰還の強制の背景、甲状腺超音波検査の縮小、避難者の住宅支援打ち切り・帰還の強制、「被曝と帰還の強制反対署名」の取り組みの4点を話しました。

「被ばくはゼロしか許されない」と主張され続けた松江寛人前院長

実行委員長は、過去2回とも昨年3月11日に逝去された松江寛人前院長でした。松江先生は、全国医学生連合で委員長を務め60年安保闘争を中心的に闘い、卒業後は国立がんセンターで放射線診断部部長となり日本の放射線診断の重鎮として活躍されました。2011年3月11日に原発事故が起き、被ばくによる健康被害から住民を守る診療所を作ろうとした時に、76歳の先生が初代院長を引き受けて下さり診療所は出来ました。放射線科の医師の先生の口癖は「放射能による被曝はゼロしか許されない」。このシンポジウムも放射能汚染による健康被害の実態を広く世間に訴えねばならないとの先生の信念から生まれたものです。その意思を引き継ぐ思いを込め一周忌に当たる2019年3月10日(日曜日)に3回目を行います。実行委員長は、不肖私が務めます。

第3回シンポジウムが提起すること

今回は講師に十分に話してもらうために演者を3人に絞りました。講師と講演内容について簡単にご紹介させていただきます。
1人目ぱ、沖縄での避難者支援などでご活躍の琉球大学名誉教授矢ヶ埼克馬氏。矢ヶ崎氏には「ICRP(国際放射線防御委員会)を科学の目で批判するレT仮題〕こについてお話をして頂きます。
2人目は、福島県原町区小高町で精神病院院長として相双地区地域医療を担うさなかに原発事故が起き、そのすべてを失いながらも政府・東京電力と渡り合い、新たに新地町に精神科クリニックを開設した渡辺瑞也氏です。先生には自著「核惨事」の内容に沿ったお話をして頂きます。
3人目は、韓国反核医師の会キム・イクチュン東国大医学部教授です。「ろうそく革命」でパク・クネ政権を倒し たムン・ジェイン政権下の原発政策についてお話をして頂く予定です。キム先生を3回連続お呼びしたのには理由があります。私たちはこのシンポジウムを単に日本だけのシンポジウムにせずに、全世界の反核・反原発を担う医療者の国際連帯の場とするという目標があります。反核・反原発は一国ではできません。国際連帯の闘いが必要です、だから韓国民衆との連帯を込めてキム先生に講演をお願いしました。また参加は叶いませんでしたが、PNW(核戦争防止国際医師会議)ドイツ支部のアレックス・ローゼン氏に毎回ビデオメッセージをお願いしています。
今回のシンポジウムが原発事故より9年目となる福島の現実と向き合い、課題を共有しながら、皆さんと共に考える機会になればと考えております。
ご多忙とは存じますが、ご参加・ご賛同を宜しくお願い申し上げます。

<テーマ>  事故より8年 福島の現実と課題

と き: 2019年3月10日(日)  午後1時半より
ところ: コラッセふくしま  多目的ホール (4階)
託児室は 和室1(3階) 駐車場は近隣のPをご利用ください

<講師のご紹介>
●矢ケ崎 克馬 氏

ICRP(国際放射線防護委員会)を科学の目で批判する
琉球大学名誉教授 物性物理学
認定原爆症集団訴訟で証言
著書『地震と原発 今からの危機』
『内部被曝』
『隠された被曝』
●渡辺 瑞也 氏
被災当事者にとっての東電原発事故
~健康被害と損害賠償問題を中心に~
医療法人 小高赤坂病院 理事長・院長
著書『核惨事』
●キム イクチュン 氏 
ムン・ジェイン政権下の原発政策について
韓国・東国大学医学部教授
前原子力委員会委員
反核医師の会運営委員

被曝・診療 月報 第31号   県民の命と健康を守るたたかいは「復興」オリンピックを許さない

この号の内容
1 県民の命と健康を守る闘いは「復興」オリンピックを許さない
2 国際キャンペーン:東京2020 -放射能オリンピック
3 公演日誌in大阪
4 学校健診打ち切りの動きを押し返した「福島の怒り」
5 トリチウムの海洋放出は危険である

県民の命と健康を守るたたかいは「復興」オリンピックを許さない

-「2020東京汚染オリンピック」国際キャンペーンに応えてー

本町クリニック院長 杉井吉彦

東日本大震災と福島第一原発事故は歴史上かってない『核惨事』事態でした。
7年半が経過し、多くの人々思いは、「ヒロシマ・ナガサキ・フクシマである以上、核・原発と人類は共存できない」「福島の現実から考えると、原発の再稼動にまったく同意できない」「原発はすぐさまでも廃絶すべき」と思っています。
現在に至るまで、国際的基準ですらない年間20mmシーベルト以下での「強制避難」解除に対して、80数%以上の人々が「安全・安心ではない」と、生活と健康をかけて拒否し、避難を続けている現状があります。そして、福島における、被曝・健康障害が、「小児甲状腺がんの多発」として現れ、福島県民の命と健康を守らなければならないとの声が、「避難・保養」に対する多くの実施・協力・支援の運動として全国に広がっています(年間1万5千人以上が保養に行くと思われます)。
そうした中で、原発の再稼動、原発輸出を推進する安倍政権は、避難計画の未完成(病院・介護施設の避難計画などできるわけがありませんが)にもかかわらず、住民の反対を押し切って、再稼動などを強行しつつあります(5㌔範囲内の住民に、『抗甲状腺剤』を予防的に配布する。 11月に原子力規制委員会決定。それによって、原発の安全性を自ら否定している)。
そして、「復興オリンピック」と銘打って、2020年に東京オリンピックが開催されようとしています。安倍首相の誘致発言「事故はアンダーコントロールされている」「現在も未来も健康障害は起こらない」は、全く、現実とかい離しています。汚染水の大量貯蔵(海への放出を狙っています)、「暫定」除去施設の未完成、除染物の放置、915万袋のフレコンパック。更に、もっとも危険な汚染デブリの除去は未だ「目途さえ」立っていません。
さらに、全県を回るとされる聖火リレーに駆り出される県民にとって、路上は汚染除去したとして、数メートル、数十メートル先の森林は全く除染されていません。「放射能汚染が循環する森」をみて下さい。放射能風雨は否応なしに襲いかかります。被曝なしとは絶対にいえません。更にオリンピック球技アスリートはどうなのでしょうか。誘致・開催の前提が全く崩壊しています。さらに新たな被曝の危機に200万県民を晒すのです。にもかかわらず、あえて『復興オリンピック』と称し、特例として福島県内での球技の開催と、オリンピック聖火リレーの出発点として(ギリシャでの採火式を3.11前後に設定する)、「福島の安全・安心」を押し付け、現実を覆い隠そうとしています。
世界の人々、とりわけ命と健康を守る医師たちは、オリンピックの日本での開催に多くの疑問を持つのは当然と言えます。本号に全文を掲載した、アレックス・ローゼン小児科医師(1回目、2回目の被爆・医療福島シンポジウムに発言を寄せていただいている)らの「IPPNW核戦争防止国際医師会ドイツ支部キャンペーン」が「2020東京『汚染』オリンピック」で世界に呼びかけています。
極めて、現実をよく把握した提言だと思います。一点だけ「日本政府は、避難解除後、故郷に帰還しようとしない避難者たちには支援金の支払いを止めると脅しています」となっていますが、事態は進んでおり、現在すでに「脅し」ではなく、支払いを止めつつあります。これにたいして、避難者は支援金の継続や増額を求めて裁判に訴えています。山形の雇用促進住宅に入居している避難者にたいしては、「退居せよ」と、裁判に訴えています。入居者は、訴える資格もない事業団に対し、受けて立つと理不尽なやり方を弾劾しています。
このキャンペーンの中で「日本の汚染地域が平常状態に復帰したことを装おうとする日本政府の試みを強く弾劾する」ことは、多くの心ある世界の人々の共通の思いだと考えます。
私は、この国際キャンペーンに賛同し、国内外の医師、医療関係者の賛同を勧めたいと思います。よろしくお願いします。
(※国際キャンペーン正文は今号に載せました。賛同の旨を是非、月報編集部または福島共同診療あてにお寄せ下さい。)

国際キャンペーン
“Tokyo2020 ? The Radioactive Olympics”

“東京2020 一 放射能オリンピック”

2020年に日本は、世界中のアスリートに東京オリンピックヘの参加を呼び掛けている。私たちは、選手たちが偏見なく平和的に競技できる期待すると同時に、野球とソフトボール競技が、崩落した福島第1原子力発電所から50Kmの福島市で計画されることを憂慮している。 2011年この地で複数の原発がメルトダウンし、放射能が日本列島と太平洋に拡散した。チェルノブイリの核メルトダウンに唯一匹敵する核惨事となった。

この惨事の環境的・社会的な帰結は、この地の至るところで確認できる。多くの家族がその先祖伝来の家から引き剥がされ、避難区域はさびれ、汚染上が詰められた数十万のバッグ(フレコンバック)が至るところに放置され、森林・川。湖は汚染されている。日本は平常状態への回帰なされていないのだ。

原子炉は危険な状態に置かれており、更なる核惨事がいつでも起こりうる。海洋、大気、土壌への放射能汚染は毎日続いている。膨大な核廃棄物が原発敷地内の野外に保管されている。もしもう一度地震が起これば、これらが住民と環境に重大な危険を引き起こすことになる、核惨事は継続しているのだ。

私たちは2020オリンピックに向けて国際キャンペーンを企画している。私たちの関心事は、オリンピックのアスリートと訪問者が、その地域の放射能汚染により健康上の悪影響を受けるかもしれないということである。放射能感受性の強い子供や妊婦には、特段の関心を寄せねばならない。

日本政府の公的な見積もりによっても、オリンピックには120億ユーロもの巨費が掛かる、一方で日本政府よ、汚染地域に帰還したくない全ての避難者への支援打ち切りの脅しを掛けている。
核事故に起因する追加被曝の一般人に対する許容限度の国際基準は、年間1ミリ・シーベルトである。

避難命令が解除された地域では、帰還する住民は年間20ミリ・シーベルトに晒される。膨大な除染作業が行われた場所でさえ、山岳や森林地帯が放射性微粒子の継続的な貯蔵庫として働くので、好ましくない気候条件によっては何時でも再汚染されることになる。

私たちのキャンペーンは、核産業の危険性について一般民衆を啓蒙することに照準を合わせる。日本の民衆がどのような健康障害に晒され続けているかを明らかにする。通常運転中の原発でも、一般民とりわけ幼児と胎児に対して重大な脅威を与えている。

核産業の有毒な遺産のための安全かつ恒久的な保管場所は、この地球上の何処にも存在しない。これこそが真実なのだ。

私たちは、原発の段階的廃止を呼び掛ける日本の仲間の取り組みを支持し、化石燃料と核燃料から離脱し、再生可能エネルギーに向けた世界的エネルギー革命を促進するため、オリンピックのために創設されるメディアを活用するであろう。

私たちは、世界中の軍事産業複合体の政治的代表者に、本件に関与することへの関心を高めて行く。

私たちは、日本の汚染地域が平常状態に復帰したことを装おうとする日本政府の試みを強く弾劾する。

私たちは、世界の全ての組織に私たちのネットワークに加わり、このキャンペーンをまとめて行く運営グループを共に立ち上げて行くことを呼び掛ける。
オリンピックまでは2年であり、まだ組織化の時間はある。
ご返事をお待ちします。

“核脅威のない2020オリンピックを”キャンペーンに向けて:
   Annette Bansch-Richter-Hansen
   Jorg Schmid
   Henrik Paulitz
   Alex Rosen

 

被曝・診療 月報 第30号  何故、県・県立医大は、検査結果を正確に 調べないのか?

この号の内容

1 甲状腺検査を正確に行わない福島県・県立医大批判
2 8・5~6ヒロシマ国際反戦共同行動に参加して
3 第32回福島県民調査検討委員会傍聴記
4 松江寛人先生の偲乙会が盛大に行われる
5 被曝・診療月報のバックナンバー紹介

何故、県・県立医大は、検査結果を正確に調べないのか?

一安倍の“復興オリンピックを手助け!!

ふくしま共同診療所院長 布施幸彦

9月5日に、福島県県民健康調査検討委員会(以下検討委員会)が行われた。小児の甲状腺検査は2011年度に1巡目が始まり、2017年度までで3巡目が終了しているが、今回の検討委員会で3巡目の最終結果が報告された。まず今回の検討委員会で発表された3巡目の検査結果を見てみよう。

〇3巡目の検査結果

対象者336、669入の内、受診者217、506入(64.6%)。異常なしのA判定2↓5、990入(99.3%)、異常ありのB判定1、482入(0.7%)、癌疑いのC判定O入。二次検査の対象者はB判定以上なのでユ、482入だが、913入(61.6%)が二次検査を受け、結果確定者826入(90.5%)で、再度B判定と確定した者は740入(89.6%)。その中で悪性が疑われて穿刺細胞診を受けた者は45入(6j%)。穿刺細胞診の結果、悪性ないし疑いが15入(男6入、女5入、震災当時の年齢6~16歳)見つかり、11人が手術し癌と確定した。

次に1~3巡目の検査結果で分かったことを見ていこう
○受診率
1巡目81.7%(年齢階級別受診率0~5歳85.7%、5~10歳95.8%、11~15歳83.1%、16~18歳52.7%)、
2巡目71.0%(2~7歳78.9%、8~12歳93.3%、13~17歳86.9%、18~22歳25.7%)、
3巡目64.6%(7歳以下74.0%、8~12歳90.2%、 13~17歳82.2%、18歳以上16.4%)。

受診率の推移で分かることは、検査毎に約1割低下しており、その中でも特に高年齢者の受診率の低下が著しい。高校を卒業した子供たちは16.4%しか受診していない。逆に言えば学校検診が行われている世代は、8割以上が検査を受け続けている。18歳以上の受診率を上げることも大事だが、学校検診の継続が鍵なのだ。だから検討委員会や甲状腺評価部会(以下、評価部会)で甲状腺検査を自主検査にして実質上縮小するために、高野徹委員らは学校検診の中止を声高に主張した。それに対してふくしま共同診療所も含めて多くの県民が県当局に「学校検診の継続」を要求したため、6月18日の検討委員会と7月8日の評価部会では「学校検診の継続」を主張する委員の発言が相次いだ。

○学校健診をめぐる論議

検討委員会では春日文子委員が「県の事業として始めた検査であり、結果も情報も県民のものだ。分かりやすく、なるべく早く県民に知らせるべき」と発言。
評価部会では、高野徹委員らが「超音波検査が健康上の利益を受けられるという証拠はなく、白覚症状のない甲状腺がんを早期発見しても予後の改善が期待できない」「若年者のうちからがん患者とみなされることにより社会的・経済的不利益が生じる」と甲状腺検査デメリット論を展開したのに対して、吉田明委員(神奈川県予防医学協会)は、甲状腺専門病院である野口病院142例(1961~2005年)、隅病院110例(1987~2007年)、伊藤病院227例(1979~2012年)の若年者甲状腺がんの多数例を紹介し「頭部リンパ節転移のあるもの、腫瘍径の大きいもの、16歳未満のもの、被膜外浸潤のあるものは、再発の危険因子となり、予後が良いとは言い切れない。微小がんといえども気管や反回神経への浸潤が懸念されるものは、細胞診を行い、手術すべき」「超音波検査は早期発見に有効」であると反論している。
複数の委員も学校検診の継続を強く求めるようになったため、学校検診を早急に中止することは出来なくなった。そのため検討委員会は、甲状腺超音波検査の「同意書」を改悪して本人や保護者に学校検診を拒否させるような方向に転換したようだ。拒否者が多くなれば、PTAが学校検診の中止を要求するということも起こりえる。そして実質的に学校検診を崩壊させるというシナリオだ。
学校検診にデメリットかおるという議論こそおかしい。彼らが主張している「過剰診断」のことだが、甲状腺倹査をすることは過剰診断でもなく、デメリットも全くない。甲状腺検査で癌を見つけることと、その癌をどのように治療するかは全く別な問題。治療方法について医学的に議論をすることは重要だとは思うが、検査をしないで癌を放置するという選択は間違っている。

○穿刺細胞診

穿刺細胞診の割合だが、1~3巡目までのB判定の割合は0.7~0.8%と変わっていないにも関わらず、細胞診は1巡回27.4%(574人)、2巡目11.3%(207人)、3巡目5.4%(45人)と検査毎に低下している。
細胞診の割合の減少について県立医大は「細胞診の適否は対象者(保護者)の希望を踏まえて判断しているが、検査初年度の平成23年度は不安が最も高く細胞診を希望する方が多かったこと、2巡目以降の検査で細胞診の適応と判断された場合でも1巡回の検査において細胞診の結果が出ており超音波検査所見で変化が見られない場合は細胞診を行わないことなどの影響が考えられる」と説明した。しかし検討委員会で清水一雄委員は「穿刺細胞診の割合がかなり減っており、25歳の節目検査ではB判定31人に対して1人も実施していない」と指摘している。二次検査の時点で細胞診をせずに経過観察中に細胞診を行って癌と診断しても集計数に反映されない。経過観察者は2700人以上で、意図的に細胞診を経過観察後に引き伸ばしていると可能性が高い。

○悪性ないし疑い及び手術の件数

1~3巡目までを合わせると悪性ないし疑いが202名(男79人、女123人)、手術した者165人(癌164、良性1人)となる。その上で、7月8日に行われた評価部会で、この集計に漏れた子供たちが11人いることが発表されている。それを含めると213人が悪性ないし疑いで175人が癌と確定した。
この数が正確かというと実はもっと多いことも分かっている。県立医大以外の医療機関で実施された手術数が2015年に7例あったが、それ以降も7例のまま増えていないことである。県立医大以外の手術数が変わっていないことについて、県立医大は「倫理上把握は不可能」「今後も他施設での甲状腺がんの把握は行わない」と返答した。
つまり実際はもっと多いことを県立医大も認めたということだ。これに対して環境省の梅田珠実環境保健部長は「甲状腺がんの把握について全体性がなかなか見えない」「他施設の手術症例については、難しいので集めないというのは初めて聞いた」「であれば、出来ないではなくて、全体性を把握するにはどうしたらいいのか、いろいろ工夫していただきたい」と苦言を呈した。
がん登録やDPC(診療群分類包括評価)を行っている大きな病院は甲状腺癌を含め、すべてのデータが県や国に報告されている。そのデータを使えば小児甲状腺がんの数の把握はもう少し正確になる。それさえ県立医大はする気がない。いや意図的に数を隠そうとしている可能性が高い。甲状腺検査、特に学校検診を続ければ続ける程、小児甲状腺がんば増え続ける。
そうなれば何時までも「小児甲状腺がんば放射能の影響ではない」と主張しにくくなり、東京オリンピック誘致の際の安倍首相の「健康問題については、今までも現在も将来も全く問題ない」という発言がウソであることが国際的に認知され、2年後に行われようとして東京オリンピックは破産してしまう。改めて言うが、すべての鍵は学校検診の継続にある。学校検診を維持するために、県・県立医大・検討委員会・評価部会を監視し続けよう。

最後にベラルーシ共和国の甲状腺学の第一人者であるユーリ・デミチク医師の言葉を引用しよう。

『子供の甲状腺がんはリンパ節転移する確率が高いのが特徴。ベラルーシ共
和国で手術せず様子をみた例と、手術をした例とでは、子供の寿命は格段に
違った。手術すれば、ほとんどの場合、高齢者になるまで健康に生きることが出来る」「見つけなくていいがんを見つけた、なんて言ってはいけない。見つけたがんは必ず手術した方がいい。数年経過を見たこともある。すると、次にする手術は大きい手術になった」「だから、見つけたがんは直ぐに手術した方がいい。それが30年間チェリノブイリで甲状腺がんと闘ってきた自分の考えだ」

          まとめ

〇3巡目の検査結果
対象者336,669人、受診者217、506人(64.6%)。
A判定215,990人(99.3%)、B判定1,482人(0.7%)、C判定0人
二次検査
対象者1、482人、受診者913人(61.6%)
結果確定者826人(90.5%)再度B判定740人(89.6%)
穿刺細胞診45人(6.1%)
悪性ないし疑いが15人
(男6人、女5人、震災当時の年齢6~16歳)
11人手術(癌と確定)

〇1~3巡目の検査結果のまとめ

★受信率
1巡目81.7%(年齢階級別受診率0~5歳85.7%、5~10歳5.8%、11~15歳83.1%、16~18歳52.7%)
2巡目71.0%(2~7歳78.9%、8~12歳93.3%、13~17歳86.9%、18~22歳25.7%)
3巡目64.6%(7歳以下74.0%、8~12歳90.2%、13~17歳82.2%、18歳以上16.4%)。

★穿刺細胞診
1巡目27.4%(574人)、2巡回11.3%(207人)、3巡目5.4%(45人)

★悪性ないし疑い及び手術の件数
1巡目 116人(102人手術-1人良性)
2巡目 71人(52人手術)
3巡目 15人(11人手術)
合計 202人(165人手術-1人良性)

被曝・診療 月報 第29号 医学的根拠のない『福島安全論』

この号の内容

1 医学的根拠のない『福島安全論』を批判する
2 反核運動と「原子力の平和利用」論は両立しない

3 福島の現状を知り柏崎を考える
4 福島の現状一国道6号線線量測定②
5 第31回福島県民調査検討委員会傍聴記

 

医学的根拠のない『福島安全論』

一福島県保険医協会・松本純理事長を批判するー

     本町クリニック院長 杉井吉彦

広島・長崎への原爆投下から73年が経過します。2011年3月に引き起こされた東電福島第一原発事故からも7年半となりました「避難・保養・医療」の原則を掲げて、ふくしま共同診療所での医療を続ける中で、「被曝に対する医療」のあり方について得るものは大きなものでした。それは、原爆と原発とは本質的には同じものであり、したがって、「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・チェルノブイリ・フクシマを、決して繰り返すな」という考え方になってきました。肥田舜太郎医師も「広島・長崎・福島jという考えを生前述べておられました。
この考え方と全く反対に、「広島・長崎と福島は別」と考え、「福島は安全」と根拠なしに主張するのが、福島県保険医協会理事長で生協いいの診療所所長の松本純医師です。彼は『全国保険医新聞』の5月15日号に「福島からの報告」として、編集部からの要請で「寄稿」を寄せています。

 「福島は安全だ」と強要する

もっとも特徴的なのば「先生どっち派ですか」と批判されたのを、全く痛みとして感じてなく県民の思い・考えを踏みにじっていることです。「福島県民の放射線障害に対する不安は続き‥‥福島県を去る人々が相次ぎ‥‥当時は住民の要望もあって放射線学習合が開かれました。安全を強調するための学習会で、危険を警鐘する学者・研究者の両極論が飛びかった‥‥私も依頼されて講演しました。私か『絶対的に危険か安全かではなく、いずれもそれなりの対策が必要です』と説明しても参加者は納得されず」となり、前述の『どっち派ですか』という批判を受け、それに対して「と問うてくるせっばつまった状況でした」としか書かれていません。健康被害・医療に対して『いずれそれなりの対策が必要』と答える態度は、福島は安全と全く一方的に思い込んでいるからこそ、出てくる言葉なのであり、県民の『患者』の思いを踏みにじる医療者として絶対にやってはならない行為(医療)と考えます。
根底に『福島安全、したがって健康被害など起こらない』と考えているために、小児甲状腺がん多発に関しても、「現在無症状で発見されている甲状腺がんの多くは乳頭がんであり‥‥遺伝子型が、BRAFタイプが多いことから、放射線起因性は今のところ否定的と思われます」と、何の医学的な根拠も参照も明らかにすることなく『今のところ』と限定しながら、科学的装いすら加えることもなく、全否定している。「しかし放射線との関係を解明するためには今後とも長期に検査を継続する必要があり、福島県民の理解を得ることが大切です」と語っている。

検査の縮小を後押しする

『福島県民の理解を得ることが大切』とは何か。調査検討委員会が検査の縮小・廃止に向かって攻勢をかけている現段階で『理解を得ること』とは、検査の縮小を後押しして、県民に対する「理解=強制」の先導者になろうと表明しているのです。「いいの診療所でも全日本民医連からの支援を受けて」(保険医新聞は保険医協会の機関紙で民医連は別にもかかわらず)「甲状腺エコー検診を行いました」と言っているが、確認された限りでは、県民の切望に押されてほんの少数の検査実施を「大げさに」書いているのです。かつて松本医師は『健康被害を大げさに言う人々』がいると保険医協会の総会で発言した経緯がありました。ふくしま共同診療所と彼のいずれが正しいか、いずれが県民の要望にこたえているのかは明らかだと思っています。
このような『寄稿』を要請した、保険医新聞の編集局の方針はあまりにも公正さを欠いています。責任は重大です。

【付記‥お詫びと訂正‥『月報』第28号の『松江先生の追悼文』の中で「医学連」=「全日本医学部学生自治会連合」としましたが、「医学連」の正式名称は「全国医学生連合」が正しく、お詫びして訂正します。複数のご購読者から指摘を受けました。もちろん全国医学生連合が60年安保闘争では圧倒的多数派であり、その委員長としての戦闘性は、晩年に至るまで保持し続けられたことは言うまでもありません。福島の記者会見で「山下なんかはギロチンだ」と言ったのを鮮明に記憶しています】

被曝・診療 月報 第28号 松江寛人名誉院長への追悼文 「貴方が築いた診療所を守り抜きます」  

 

この号の内容

1 帰還強制に抗う福島県民と連帯を
2 松江寛人名誉院長の追悼文
3 隷従の「科学」一学術会議声明に接して思う②
 琉球大学名誉教授 矢ヶ崎克馬
4 第30回福島県民調査検討委員会傍聴記
ふくしま共同診療所事務局長 須田義一郎
5 福島とハンフォード中間施設、イノベーションコースト構想から見る福島浜通の現状② 岡山 浩

松江寛人名誉院長への追悼文

貴方が築いた診療所を守り抜きます

本町クリニック院長 杉井吉彦

ふくしま共同診療町の初代医院長を務められた、松江寛人名誉院長が、3.11東日本大言災・福島第一原発事故からまさに7年の、3月11日逝去されました。
昨年3月10日脳出血を発症し、11日深夜に開頭血腫除去術を行い、1年問の壮絶な闘病を経てでした。享年81歳。
松江先生は、千葉大学在学中の1960年、安保闘争の真っ只中に、全国の医学部自治会の組織「医学連」(全日本医学部学生自治会連合)の委員長として、最先頭で闘われました、卒業後「国立がんセンター病院」で38年間勤務。放射線診療部長として、日本の放射線診断学、特に、日本における「超音波検査」の先駆者・指導者としてゆるぎない権威を確立してきました。また米国タフツ大学放射線科客員教授としての活躍も医師としての経歴としてすばらしいものでした。
2001年に「国立がんセンター」退官後は、銀座・杉並に「がん総合相談センター」を開設し、がん患者・家族に心から寄り添い、診察・相談を全力で取り組まれました。
2011年の秋、福島第一原発事故で放出された、放射線による健康被害から県民を守るためには、独自の医療機関が必要だと、「福島診療所建設委員会」が設立されました。そのとき松江先生が、「私は、放射線科の医者ですが、放射線科医は、危険を感じてまで、仕事をやっています。本来はあってはならないものです。しかも、われわれは医療のために放射線を使っていますが、そうではなくて、別の目的で使っていることは、本来に許しがたい」「放射線というものはそもそも私に言わせれば、ゼロ以外ぱ危険です」(2015年3月 「第1回 被曝・医療 福島シンポジウム開催挨拶」と断言し、初代院長を引き受けられました。「それに賛同したわれわれ医者が『じゃあ、無給であろうと無報酬であろうと、とにかくやりましょう』ということで始まったのです」(同上)。当時すでに70代後半だった松江先生の決断が、私を含め医師グループの決意をうながし、まさに先生の指導なしには開設・運営はなかったといえます。
そして2014年11月に布施先生が新たに院長を引き受け、名誉院長になられてからも、常に、診療の中心でありました。 2017年の3月12日の『第2回被曝・医療福島シンポジウム』の実行委員長として呼びかけ、開催の前日に倒れるまで、叱咤激励を、診療所のすべての関係者に送り続けられました。
開設後は、甲状腺超音波検査を駆使し、診療、指導に本当に真摯な、厳しい態度で臨まれました。『小児甲状腺がんば放射線の影響でない』と主張する、県当局・福島医大・調査検討委員会に徹底的に対決(戦闘性は常に我々のレベルを超えていました)してこられました。この精神を私たちは必ず受け継がねばなりません。
松江先生、本当にありがとうございました。
そして私たちは誓います。「広島には、肥田舜太郎先生、福島には松江寛人先生」この二人の、放射能による健康被害に苦しんでいる人々に、心の底から寄り添い、診療を続けられた精神を、必ず引き継いでいきます。みんなとともに確認した『ふくしま共同診療所』の医療方針・・『避難・保養・医療の原則』を実践していきます。
松江寛人先生、安らかにお眠りください。
合掌。

帰還強制に抗う福島県民と連帯を

帰還強制に抗う福島県民と連帯を3。11反原発福島行動での挨拶から

ふくしま共同診療所院長 布施幸彦

ふくしま共同診療所は開設してから5年間、診療を含め様々な活動をおこなって来ました。これも全国・全世界の皆様の様々な御支援のお陰です。最初に感謝申し上げます。本当に有難うございました。その上で、今後も活動を続けられるよう更なる御支援をお願い申し上げます。
診療所が取り組んでいる「被曝と帰還強制反対署名」への御協力にも感謝申し上げます。署名は現在48、520筆集まっています。私たちは県にこの署名を提出し、今までに5回、県当局と交渉してきました。県の回答は「ゼロ回答」ですが、今後も署名を集めて、粘り強く県当局と交渉を行い、県に圧力をかけていく所存です。そのために、今後も署名の御協力お願いします。

甲状腺エコー検査の拡充こそ、福島県民の要求

今、福島県では小児甲状腺検査を縮小しようとする動きが強まっています。福島県県民健康調査検討委員会、甲状腺検査評価部会、福島県立医科大学が公然と甲状腺検査を縮小し、自主検査にしようとしています。1月26日の甲状腺検査評価部会で、高野徹委員は「学校検診という形で、‥・強制力を持って検査が行われている‥・。これは子供の人権問題」と、甲状腺エコー検査が子供の人権を踏みにじる行為だと断じ、中止するように提言しています。現在小児甲状腺がんないし疑いが197人、手術して甲状腺がんと確定した子供が160人と公表されています。しかしそれ以外にも9名が手術を行っており、今までに200名を超える甲状腺がんないし疑いが発生しています。
県民健康調査検討委員会は1巡目の検査で甲状腺がんないし疑いが116人発見された時には、「放射能により甲状腺がんが発生するには5~10年かかる」と主張していました。彼らの主張でもこれから甲状腺がんが増えていくことになります。それなのに彼らは甲状腺検査を自主検査にしようとしているのです。

この動きに対して、福島の住民は「甲状腺検査を維持」するように県当局に申し入れを行っています。福島県民の声は「甲状腺検査をこのまま続けろ」です。木目の集会には参加されていませんが、昨年私と韓国の国会議員会館で発言した大人の甲状腺がん患者の大越さんは、『週刊金曜日』の3月9日号で「『福島県民健康調査』のおかしさ、差別、そして子供たちの未来」と題して大人の甲状腺がんについて発言しています。大人の甲状腺がんも増えているのです。診療所も「甲状腺検査を維持し、更に大人にも拡充」するために、県内各地で大人も含めた無料甲状腺エコー検査と講演会を行っています。木日も午前中にこの会館の隣の公民館で甲状腺エコー検査を行ってきました。 11人が参加して下さいました。
2月には郡山市と自主避難者を対象に長野県松本市でも行いました。私たちはこれからも、甲状腺検査を維持・拡充させるために、県内外で、講演会と無料甲状腺エコー検査を行っていきます。

高汚染地区へは帰らない

避難指示が解除された町に帰った住民は、浪江町2%、富岡町2%、飯館村7%、南相馬市小高区19%、楢葉町26%だけです。浪江町の世帯数は6、950ですが、その内、約3、000軒が更地になります。理由は、家があると固定資産税が発生するからです。
2018年から50%、2021年から100%。そのために家を解体しているのです。建物がなくなれば固定資産税は安くなります。帰る気がないから、解体して、ているのす。避難指示が解除されても多くの住民は、高汚染地区に帰らない闘いをしているのです。

子どもを人質にする帰還強制を許さない

飯舘村や川俣町山木屋地区では、今年度から「小中一貫教育」と称して、学校を元の場所で再開させます。「小中一貫教育」と言っても特別な教育はなく、生徒数が少なくなったので一貫校にしただけです。震災前には、山木屋地区では生徒数が減ってしまったので廃校にし川俣の小中学校に統合させる計画が出ていましたが、原発事故があったので元の場所で再開したのです。川俣町の教育長は「地域に学校がなくなると地域が発展しないから学校を再開する」と述べています。学校を再開することで、子供を人質にとって、強制的に住民を帰還させようとしているのです。私たちは「被曝と帰還の強制反対署名」を県内の小中学校を中心に行っています。県教組のある支部が署名に取り組むことを決定しました。現場の教職員が学校再開に反対すれば、学校再開を止めることが出来ます。

「自主避難者」は立ち上かっています

県外の「自主避難者」への住宅補助は昨年3月で切られました。しかし彼らの闘いも始まっています。米沢市の雇用促進住宅に「自主避難」した8世帯に対する住宅明け渡し要求訴訟が山形地裁で行なわれています。国により被告とされた武田徹さんは「住宅補助が打ち切られ生活は苦しいが、福島の土壌は汚染されたままで子どもの内部被ばくが心配で帰れない。地域のつながりも奪われた」と陳述し、記者会見と報告会では「私たちが闘っている相手は国家権力。だからなかなか声を上げられない。私はみんなの声を代弁していると思っている」「避難者の個々の事情を無視して、一方的に補助を打ち切る、そんなやり方はまちがっている。正していきたい」と、人生を賭けて闘うことを宣言しています。武田さんをはじめ、多くの「自主避難者」が人生を賭けて裁判闘争を闘っています。彼らを支援し共に闘って行くことが必要だと思います。
東京オリンピックを口実とした国や県による甲状腺検査の縮小・被曝と帰還の強制が強まっています。しかし福島県民の闘いも陸続と始まっています。彼らと共に生き、共に闘って行きましょう。本日をその第一歩としましょう。診療所は、福島県民と共に、全国・全世界の仲間と共に闘って行くことを誓って、集会の挨拶とします。御静聴有難うございました。

 

被曝・診療 月報 第27号 超音波健診の拡充で県民の健康を守ろう

この号の内容
1 隷従の「科学」―学術会議声明に接して思う
琉球大学名誉教授 矢ヶ崎克馬
2 避難者の健康を守るために
避難者の健康を守る会 森永敦子
3 院内集会「多発する子どもの甲状腺がん―福島県民健康調査はこのままで良いのか―」に参加して
本町クリニック事務長 鈴木健一
4 福島とハンフォード 中間貯蔵施設、イノベーションコースト構想から見る福島浜通りの現状超音波健診の拡充で県民の健康を守ろう ――岡山 浩

 

本町クリニック院長 杉井吉彦

3・11東日本大震災・福島第一原発事故から7年、ふくしま共同診療所開設から5年が経過しました。
福島県からの県外避難者は依然として復興庁の2月末の発表ですら3万4千人(自主避難者はカウントされなくなっている)にのぼる。うち1万3千人は「親族・知人宅等」に分類されています。
昨年10月で市町村が「把握している」18才未満の子供の避難者は、県内8千人、県外1万人である。この年齢層の全員に行うはずであった甲状腺検査は、実施者の怠慢と、意識的な「段階的縮小」方針によって、3巡目の検査の実施率は60%以下になっている。18才を超えている県民に対する甲状腺検査は20%前後である。早期発見・治療の原則が危うくなるような水準になっている。すでに、統計学的な評価が困難になってきており、実質的な『縮小状態』といわざるを得ません。
法律的な、耐用の2年をはるかに超えた「避難住宅」になお5千人以上が住まわされています。「震災関連死」は2200人を超えて年2~300人で増加し続けています。これが福島の現実です。

小児甲状腺がんは増えている、健診の縮小はすべきでない

小児甲状腺癌問題は、ますます深刻度を加えています。3月5日の第30回県民健康調査検討委員会の発表でも新たな腫瘍発生が報告されています。検討委員会の発表以外でも何人も癌患者がいることがわかっていて、健診から「保険扱い」になった後で発生したケースも全く発表されていません。
さらに、1月26日開催の第9回『甲状腺検査評価部会』の公式報告では、「甲状腺検査にはデメリットがあり、全くなくすというのは難しいのではないか。いかにして検査による不利益を少なくするかを考える必要がある」などとの発言が「報告」されている。健診を、縮小・廃止の方向に大きく舵をきっていることは、明らかです。
「安全・安心・帰還・復興」の大方針の下、安全性に全く根拠のない20㍉シーベルト基準での避難指示解除・帰還強制は、「住宅空け渡し裁判」という法的な強制力で進行している。その理不尽な方針に対して、多くの県民が帰還を拒否している。昨年4月に解除された3万1千人に対して2月末の段階で1800人、人数が最大の浪江町での帰還率は3.2㌫に過ぎません。多くの県民が「健康と命」の問題を、生活と人生をかけて拒否し続けています。

「避難・保養・医療」の原則で、県民の健康と命を守ろう

現在、問われている最大の争点は、この「健康と命」問題です。原発による放射線障害が存在するのか、現在も進行しているのか、将来はどうなのか、この問題をめぐって激しい分岐が起こっています。私たちは、甲状腺癌の多発を認め、これが放射線障害によるものとして認め、強靭な対策を立てるべきとの立場です。将来の健康被害は起こるという立場です。長期にわたり福島県民と多くの人々の健康を守り抜く立場です。このことを認めようとせず、放射能は「安全だ。危険というのは『差別』」という人々は、許すことができません。
だからこそ「避難・保養・医療」の原則が、今こそ福島の地で必要とされていると思っています。避難を続けている人々を支援し、健康を守りぬかねばなりません。保養をもっと大きく広く拡大していかねばなりません。常磐線の延伸に伴う、多くの労働者に対する被曝労働強制を許してはなりません。
「ヒロシマ・ナガサキ・ビキニ・チェルノブイリ・フクシマ」を繰り返してはなりません。原爆・核武装・原発・再稼動は一連のものであり、人類と共存できるものではありません。この5年間のふくしま共同診療所の経験が、これを実感・得心するものでした。